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君がいた、夏 [よさこい]

 今年の婆娑羅祭りの花火。
見ようかどうか正直迷っていた。
花火が始まる数分前に踊りの知人が
花火を見に行かないかと誘ってきた。
これも何かの導きかもしれないと思い、
彼の誘いに乗ることにした。
「花火を見るには良い場所があるんよ」と
得意げに言う知人。
彼の車に乗って着いた場所は
昨年、花火を見た場所と同じ所だった。
 

知人はその場にいた他の知人らと一緒に花火を見ていた。
僕は少し離れた車の影でその花火を一人で見ていた。
目の前で光る大きな花火。

去年、ガンで亡くなった一番の親友と交わした
メールの内容を思い出した。

「花火が終わったのかと思ったら、また上がったよね」
「こんな綺麗な花火を見ていると嫌なことも忘れられそうね」

彼女はきっと丸亀市内の病院から
同じ花火を見ていたのだろう。
彼女が亡くなるまで病気の事を知らなかった自分。
彼女がどんな気持ちでこの花火を見ていたのか?
そして、どんな思いで僕と花火の話題でメールを交わしたのだろうか?
僕は花火を見ながらそんなことばかり考えていた。

この花火、今年も彼女は空のどこかで見ているのかな。

花火を見て自然と溢れてきた涙。
最後まで見るのがとっても辛かった。
帰り道が混むからという理由で、
知人とフィナーレ前にその場を去った。

次の日、彼女が極に入る前から所属していたチームの演舞を
何度か見ることが出来た。
極が出来る1年前に撮影した婆娑羅祭りの写真にも
彼女は笑顔で写っていた。
極が出来た年の婆娑羅でも彼女はそのチームで婆娑羅まつりを踊っていた。
その時と変わらない衣装。
変わらない曲。変わらない振付と構成。
当時から踊っている踊り子もまだ多く在籍していた。
そのチームで一際目立っている男の子がいた。
僕はその顔に見覚えがあった。
以前、彼女が「私の教え子なの。ムグさん、一緒に写真撮って」と
言ってきたときに撮影した子だった。
昨年までは気付かなかったから、
今年から踊り出したのだろうか?
その子が楽しそうに踊っている様子を見ていると
何だかとっても嬉しくて
心の中でその子に「踊ってくれてありがとう」って
言っている自分がいた。

総踊りでもその子は楽しそうに彼女が在籍していたチームで
他の仲間と一緒に固まって踊っていた。
僕がカメラを向けると、まるで親しい人に見せる様な笑顔で
僕のカメラに一番の視線をくれた。
かつて彼女が僕のカメラにくれた一番の視線のように。

帰宅して写真データを確認すると、
総踊りの時のこの場面が一番良い写真に出来上がっていた。
彼女の知人を頼って、このデータを届けようと思った。

今年の婆娑羅祭り、雨に降られまくりで
カメラマンには辛い2日間だったけど、
彼女の事を沢山感じられたステキな時間だった。

姿は見えないけど間違いなく
「君がいた、夏」だった。


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